「Oggi」 なるほど北川塾 〜基礎から学ぶ〜

04年12月号
昨年の流行語大賞「マニフェスト」は今年、どう羽ばたいたの?

このコラムの第1回に、流行語大賞ともなった「マニフェスト」についてお話ししましたが、今月が最終回。結びとしてその進展についてお話ししたいと思います。

マニフェスト知事たちの熱い1年間を検証する!

9月8日に、早稲田大学マニフェスト研究所の主催で「第1回ローカル・マニフェスト検証大会」が開かれました。去年の1月、僕が三重県知事時代にマニフェストを掲げて選挙しようと呼びかけ、それに応えて4月の統一地方選挙で当選した5人の知事さんに集まっていただき、就任後1年半が経過した今、1年分の成果を検証したんです。

マニフェストというのは、期限・財源・数値を明確にして、事後に検証可能であることが要件です。検証は本来、主権者である県民がするものですが、知事の任期は4年ですから、その4年を通しての結果が本当の成果といえるので、今回は中間評価ということで、各県庁内部の自己評価と外部専門家の評価を集めました。

「進んでいる人たちはすごいなあ」と感心させられたのは、まず積極的に自分たちで内部評価をやっていたこと。しかも、それだけだとお手盛り&]価になってしまうかもしれないので、外部の方に客観的に評価してもらいましょうと言ったら、「それは願ってもない」とみなさんおっしゃるんです。ここが国と違うところですね。

そこで、同じ基準を設けて5つの県を評価することにしました。具体的には、マニフェストの形式要件、1年分の実行過程、1年後の進捗度・成果、評価者の加点、という項目で、地方自治やマニフェスト運動に詳しい学識経験者など5人の方に、各県を合計100点満点で評価してもらいました。

さて、そのそれぞれの得点はいかに!?

総合得点で第1位となったのは、88点をとった岩手県の増田寛也知事。公共事業200億円を削減して緊急雇用対策に充てるという政策もハッキリしているし、第三者委員会が評価をする仕組みもできていて、内部評価の内容もダントツに充実していました。彼は3期目ですから、職員の意識改革を進めるなどのマネジメント面で有利だったこともあるでしょう。

さて、こうしたマニフェストは、知事が県民と直接約束をしたものです。すると県議会としてはおもしろくない。「公共事業を140億円削減するって、だれの許しを得たんや? おれたちを素通りしとるやないか」とね(笑)。そこで県議会とのバトルになるわけです。こういう苦労をしたのが神奈川県の松沢成文知事。でも知事が議会に叩かれるのはいいことでもあるんです。やられると緊張感が生まれるから。知事を批判することで議会も成長する。県民にもその真剣な様子が伝わる。それは僕が三重県でやってきた実感としてありますよ。

人間、逃げようと思えば逃げられる。情報も隠そうと思えば隠せる。でもマニフェストは、在任中に何をどこまでやると選挙前にオープンにします。県民が判断できるよう、情報も公開する。これは、逃げられません。だから頑張るんです。何事もそうでしょう?

今回集まっていただいたのは、ほかに、佐賀県の古川康知事、福井県の西川一誠知事、埼玉県の上田清司知事。それぞれに点数をつけましたが、点数自体の勝ち負け≠ェ目的ではないんです。外部の方からの指摘を受けて、誤りは改善する、よいところは伸ばす、そうしてどんどん議論できるようにしていくこと。みなさんそれは熱心で、どこかがすごい内部評価資料を作っているとなったら、うちも頑張ろう、と資料もどんどん進化していく。そうして刺激しあい、学習する組織になっていくことが大事なんです。こうして新聞にそれぞれの点数なども含めて発表していくことも、当事者たちにはもちろん、ほかの自治体にもいい刺激になると思います。

マニフェストの伝道師は見る。未来は明るい!

これまでは「政治家が無責任、役人が先送り、有権者が白紙一任」、こういう無責任な「お任せ政治」でした。でもマニフェスト型政治が普及していけば、政治家は守るべき公約を明らかにして、その実現に向けて役人もともに努力する。住民はその経過を見守りチェックするのだとなれば、有権者に参加意識が出てきます。「白紙で任せるわけにはいかんやろ」ってね(笑)。そうなっていくようにと、今回の提言も「さらば、お任せ政治」と謳いました。

たとえば、先日の奈良市長選では、市民がマニフェストを作成して、各候補者にぶつけたというようなこともありました。まさに「by the peple」ですよね。いい兆しだと思います。

今回の県知事の検証大会と同じように5月には、僕の主宰する21世紀臨調が第1回の「政権公約(マニフェスト)検証大会」として国政、つまり小泉内閣の検証も行いました。そして11月末には、マニフェストを掲げて当選した市町村長の検証を予定しています。

来年は、市町村合併に伴う首長選が全国で200ほど行われます。いくつかの町や市が寄り合うのだから、それぞれの言い分もあるでしょう。だからこそ、何をどれだけいつまでにどうやってやるのだ、という政策をはっきり掲げて、これをやるためにはこういう負担もある、と苦い薬も誠実に説明する。そうして選挙を戦うべきです。これがマニフェスト型選挙を拡大していく契機となると思います。

地方を出発点に、今はまだ小さな部分だけれど、これが数年後には、マニフェスト型の選挙があたりまえになる。そしてそれは国政へとも広がってゆく――。

「北京で一羽の蝶が羽ばたけば、それに共鳴する蝶が現れ、やがて大きな風を巻き起こして最後はニューヨークでハリケーンが起きる」というたとえが、今まさに実現しつつある手応えを感じています。日本はたしかに700兆円もの借金のある国ですが、未来は決して悲観的ではないと思います。

今後も、“マニフェストの伝道師”として、この蝶たちの羽ばたきが広がってゆくのをサポートし続けたいと思っています。

短い間でしたが、みなさんお付き合いありがとうございました。では、投票所でお会いしましょう!

(構成/小野純子)

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