「Oggi」 なるほど北川塾 〜基礎から学ぶ〜

04年11月号
地方自治体の知事って国会議員とどう違うの?どんな仕事をしているの?

前回は国会議員の実際についてお話ししましたが、今月は地方の知事についてお話ししましょう。僕が知事になったのは、国会議員としてしばらく腰を据えて理論を勉強しようかと思っていた時期に、たまたま回り回って僕のところに白羽の矢が立ってしまったから(笑)。
じゃあ理論構築より実践の場として、地方自治の世界に飛び込んでみようと思って決心したんです。 議員と知事では、どちらも政治家ということで同じように思われるかもしれませんが、実は全く違います。

知事はパブリックな存在。公人としての行動を徹底!

何がいちばん違うといって、それは、国会議員は自分で個人事務所を運営しているようなものですが、知事は「パブリックな組織のトップ」であるということです。 だから僕は知事になったとき、個人的な組織である後援会を解散しました。もちろん応援してくれた人たちからはものすごく叱られましたけどね…。

同時に、「公人」として振舞うよう、結婚式やテープカットなどのプライベート系のつきあいはやめました。夜の宴会もナシ。そのかわり、僕は自慢じゃないけど、弁当を食べた数は知事の中で日本一じゃないかと思うな(笑)。朝から晩まで県庁にいて、夜も県庁で弁当。車の中で食事した回数も数知れずですよ。

そ、それがジョーシキ!?県庁内の驚くべき実態

夜の接待ということでいえば、県庁内には官官接待やらカラ出張やらが当たり前のように横行していました。しかし、「10万円を自分の懐に入れたのではない、そのかわり県のために1億の補助金を取ってきたのだから9990万円分県のためになったではないか」というのが当時の県庁の常識≠セった。でも「それは違うやろ!」と、3か月間部長たちに徹底的に調べさせたんです。そして、もし6か月後に新たな問題が発覚したら部長が責任をとれ、と厳しく言い渡したんですよ。当時は情報非公開が当たり前、問題があっても内部でかばいあうような体質だったけれど、そう言ったら、真剣に調べてきましたよ。

その結果、なんと11億6千万円もの無駄遣いがあった!利子を入れたら13億ですよ。県のお金を黙って遣ったんだから、自費で県に返せ、ということで、まず自分からいちばんにと、知事の給料30%カットを10か月間やりました。でもこの借金≠県全体で全部返し終わるのに去年までかかりましたよ(笑)。

意識を変えれば社会も変わる!?

国ともよくケンカしました。たとえば、名刺。会社にお勤めのみなさんであれば、会社の名刺は会社がつくってくれるでしょう。でも県庁職員は自分で使うこともあるからと、私費負担なんです。それで総務省とやりあった。

私費となると名刺を出すことが少なくなります。が、もし、県庁職員6000人がそれぞれ自分の仕事をアピールするアイデアを凝らした名刺をつくって配れば、全員が県の宣伝マン≠ノなれます。三重県には伊勢神宮や世界遺産になった熊野の森もある。自分の仕事に誇りをもって「県」そのものをアピールしていく道具として名刺を使えばいい、だからもちろん公費でつくる。普通の会社では当たり前の営業や経営の意識をもつべきだと思ったんですね。

ほかに、たとえば三重県は日本で初めて「産業廃棄物税」をつくりました。今や深刻な問題になっているゴミ処理場ですが、ゴミを捨てるときには税金を取りますよ、と言ったんです。そしたら、最初の試算では11億の税金が集まるはずだったのに、最終的に入ってきたのはたったの1億3000万円だった…!企業の側もゴミにしたら税金を取られるというので、リサイクル・リユースなどしてゴミを減らしたんですね。ゴミが減れば処理場がまず長もちする、産廃税を資金にして処理場をつくることもできる、企業自体も出費を抑えられる。

環境と経営は対立軸にある―環境に配慮していたら儲からない、というのがこれまでの考え方でしたが、そうではなく同軸にあるものです。現にこうして三重県のゴミ問題はふたつを両立させました。

そうそう。三重県庁にはゴミ箱がないんですよ。だいたい役所のゴミはほとんどが紙。「分ければ資源、混ぜればただのゴミ」と(笑)それを回収分別箱へ入れるようにしたら、県庁内のゴミが8割も減りましたね。こうして、変えていくことができるんです。

元気な知事が次々に登場地方から変わっていく!

僕が県知事時代にやってきたことは、とにかく情報非公開やお役所体質・意識を根底から変えていくことでした。今の「行革」のモデルになることはまず三重県でやったと思っています。もちろんいろんな方面からの抵抗や反発は大きかったですよ。僕は、いわば“黒船”だった。自分たちの今までの文化を破壊されると思ったら、人は抵抗しますからね。

昔ながらの「利益調整型」のほかの県知事にも、やれパフォーマンスだなんだと叩かれたものでしたが、今はいろんな特長をもった元気のいいおもしろい知事がたくさん出てきていますよね。そして特色ある地域づくりをしておられる。

民間人からいきなり知事になって大丈夫なのかと思われる人もいるでしょうが、大事なのは、知識よりもウィル(意志)なんです。地域住民のためになることはどういうことで、その地方をどう変えたいのか、という「志」があれば、スキルはついてくるものです。

知事同士の横のネットワークもできてきました。これまでは各県間では「良いことは隠す」というのが常識≠セったんです。でも今は、問題ごとにゆるやかなネットワークをつくって、情報交換をしたり、いい意味で競い合ったりしています。地方から、政治を、人々の生活を変えていく、という流れがしっかりとできつつあるように、僕は思っています。

(構成/小野純子)

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