「Oggi」 なるほど北川塾 〜基礎から学ぶ〜

04年10月号
華々しく見える国会議員。でも、実際のところ何をしてるの?

アツかった夏の参議院選挙も終わり、新しい国会議員が誕生しました。そこで今月は、国会議員はどんな生活を送っているのか、僕の経験から、その知られざる実態についてお話しましょう。

「キンキゲツライ」ってナンだ???

よく言われるのが、「金帰月来」という言葉。これは国会議員が「金」曜日に地元に「帰」り、「月」曜日に東京に「来」る、の意味。ゆっくりと週末を過ごしに帰るわけではありませんよ。地元に帰ったら、土・日・月と地元対策に駆けずり回るんです。政治的報告会、行事への参加、後援会との相談、地域の陳情を聞いたりその現場を見に行ったり…。そして月曜日の夜に東京に戻ったら、平日は国政の仕事。休む暇なんてありません。お盆や正月などはむしろ「稼ぎ時」で、集票のための活動で人に会う予定でいっぱいです。

なぜそんなに地元での活動が必要か。それは選挙に莫大なお金がかかるから。何千万、何億というお金ですよ。たとえば、事務所を4か所にもって、10人の人を使ったとしましょう。事務所の維持費が月50万円×4か所で200万円、人件費を約20万円ずつ10人に支払うと、月200万円。両方でもう年間4800万円必要でしょう。ご挨拶の葉書を年2回、10万人に送ったら、年間1000万円。いちばんわかりやすい部分だけ挙げてもすでにこんなにお金が必要。もちろんこれだけでは済みません。また、選挙活動中だけにお金がかかるのではなくて、当選した後も次の選挙のことを考えながら活動し続けるわけだから、代議士としてやっていくための経費も全部自分もちです。これを全部自力で集めなくちゃいけないんだから、スキャンダルが出てくることもあるわけです。本当は政治家は貧しいもんです(笑)。自分の贅沢なんて全然できませんでしたよ。同窓会で友達に会っても、同級生のほうがずっと豊かだった(笑)!

毎日猛勉強&睡眠は新幹線で。代議士の苛烈な日々

さて、月曜に東京に戻ってきてからは、何をするか。

月曜は国会は休みで、火曜から金曜までは、ほぼ毎朝7時半や8時から朝食会という名の勉強会。官僚の局長クラスやNPOの人、産業界の大物などを交えて行います。夜、宿舎に帰ってからも、寝る間もないほど仕事、勉強。

国会議員は本当によく勉強しますよ。部会などで自分の考えを発表して、他を説得し、どんなことがあってもブレない自分を出していくことで政治的信用力がついてくるものだから。そりゃ必死です。

僕は代議士1.2期目は、今の自民党幹事長・安倍晋三さんのお父さんの安倍晋太郎さん派に属してたんですが、「お前は肝心なときに会合にいない」って、よく怒られました。安倍さんの地元の長州(山口県)は総理大臣を7人も輩出しているお国柄ですからね、国会議員の育て方をよく知っている。だから、地元に帰ったりすると「頼りない」って られるんです。でも僕は三重一区という全国でも有数の激戦区でしたからね。地元に帰らないわけにはいかなかった。

とにかく、国会議員は忙しすぎます。新幹線の移動の時間があれば、「ああ、休める…」と思うくらい。でもそれは大きな問題。こういうことが常となると、ルーティーンワークをこなすのが精一杯になって、人間、ものを考えなくなります。地元のことは、県や市に任せて、もっと大きな視点で国のことをじっくり考えるべきなんですが…。国会議員は国の外交、法律、防衛などの政治活動に専念できないと、本末転倒です。

ウラワザあり!国会ってそうなの!?

国会で寝てしまう議員もいますが、国会は形骸化していて、実はウラで決まっていることが多いんです。法案は役人がつくるし、国会対策や根回しやらで話はついていて、国会ではそれを認めるだけというパターンになりがちです。

ウラで話をつけるといえば、よく首相や代議士の重鎮が料亭から出てきたりするのをテレビで見るでしょう。なぜ、ああいうところで会食をするかというと、ホテルなんかでは誰に会うかわからんからです。料亭の中に入ったら、実は、内側で密かに時間差で部屋を移動したりして、思わぬ人物と人物が人知れず会ってたりするんですよ。これがいわゆる「待合政治」といわれる“密室政治”ですね。

でも細川政権以降は、そういうことはぐっと減って、最近では各種の委員会などでの討議も国民に見えるかたちでオープンになってきています。情報化時代なのですから、この方向はどんどん進めるべきですね。

代議士の家族悲喜こもごも

少し前になりますが、女優の水野真紀さんが国会議員の後藤田正純さんと結婚されましたね。代議士夫人というのも大変ですよ。「電信柱を見ても頭を下げる」と言われるくらいなんだから(笑)。常に人から見られているし、プライベートだけでなく、パブリックなパートナーとして、代議士の代理で挨拶に行くこともよくあるし。

妻だけでなく、家族もね。だいたい地方選出の代議士は、家族は地元で、本人は東京の議員宿舎での生活という人がほとんど。僕も代議士時代はここにいました(ちなみに3期上で小泉首相もいました)。でも、子供には可哀相な環境でしたね。父親がほとんどいない家で、しかもそこがビジネスの場になっているし、表に出れば「政治家の子供」っていう目で見られるし。僕の親父も政治家でしたが、4人の兄たちは政治家にはなりたくないって否定的でしたよ。

単純な比較はできませんが、県会議員、衆議院議員、知事として働いてきて、国会議員時代がいちばん忙しかったですねえ。でも30歳代に国会議員を務められて、無我夢中で勉強できたことは本当によかったと思っています。続く、地方自治体の知事がどんなものか、というのはまた来月お話しましょう。どうぞお楽しみに。

(構成/小野純子)

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