「Oggi」 なるほど北川塾 〜基礎から学ぶ〜

04年8月号
首相まで未加入だったとは! わかりにくい年金制度、いったいどう変わるの?

閣僚や党首から首相まで、未加入・未納が発覚して、話題沸騰の年金問題。そればかりが騒がれて、肝心の改革の中身がなかなか見えてこないと思う読者も多いでしょうから、今月はこの話題を。

破綻寸前の年金制度、どう変えるというの!?

年金とは、20歳から60歳までの全国民――サラリーマンは厚生年金に、公務員は共済年金、自営業者らは国民年金などに加入して保険料を支払い、65歳から支給を受けるというもの。現役世代が保険料を支払うことで、高齢世代を支える、という仕組みになっています。

この年金の制度設計は、右肩上がりに経済が発展し、人口も増え高齢者よりは若年層が多い、という状況が前提となっています。しかし今、経済は停滞、また少子化の進行で、支える世代より支給される世代の人口のほうが多い。それでは年金制度は成り立たない! おまけにこの国民年金、議員や閣僚のみならず、'02年度末の未納率は37.2%。国民の義務といいながら4割もが未納とは、もはや制度として破綻しきっている! と大騒ぎになって、今国会で改革案が検討されたわけです。が、この内容がまたまた、問題だらけ。

今回スッタモンダの末、成立した年金改革関連法案は、2017年までの14年間で、保険料を上限付きで段階的に引き上げ、支給を減らす、というものです。具体的には、厚生年金は、年収に対して13.58%の現在の保険料率を、'05年以降毎年0.354%ずつ引き上げ、労使合計で18.3%とする。国民年金は、現在の月の支給額13,300円を毎年280円ずつ引き上げ、最終的には16,900円とする。給付については、厚生年金の場合、現在の現役世代の平均手取り収入の59・3%という給付水準を引き下げていくけれど、50%以上は確保するといいます。

しかしこれが、試算してみると「おかしいやないの?」という声がいたるところから噴出。

一例を挙げれば、現在60歳の人が65歳からもらうのが57.4%、それが75歳になったら47.8%になるという試算もあります。高齢になるほど生活費も少なくて済むから大丈夫だ、というのが小泉首相の言い分なのですが、それもあんまりな話です。現在55歳以下の人にいたっては、最初から50%を下回る計算です。

実はこの50%という数字は、政府の言う「モデル世帯」を基準にしているのですが、これが「夫が40年以上サラリーマンで妻は一生に一度も働いたことのない専業主婦」というもの。こんなケースは今やほとんど当てはまらないというのが、本当のところではないでしょうか。Oggiの読者から言えば、まるで信頼性の薄い話でしょうね。

わかりにくいから一元化!?

未納問題が多発した原因のひとつには、制度自体の複雑さがあります。たとえば、会社員が会社を辞めれば国民年金に移る手続が必要、会社で働く独身女性がサラリーマンと結婚して専業主婦になれば、夫の会社に届出が必要。また、国会議員に未納が多かったのは、議員年金と国民年金を一緒と考えていたから、などなど。それぞれ自分から届け出なくてはいけないので、わからないまま未加入・未納という事態にもなりがちです。

そんな複雑な年金制度を、わかりやすくシンプルに「一元化」すべきだという問題提起もあります。

そこには、制度間での不公平感という問題もあるのです。たとえば「厚生年金は会社が半分負担してくれるけれど国民年金は全額自己負担なんだよ!」「専業主婦は何も納めないで何故もらえるの!?」「それより、議員年金なんて10年納めるだけで年間400万円ももらえて、国が60%以上も負担しているなんて優遇されすぎじゃないの!?」というように、それぞれの立場ごとに、言いたいことはたくさんあるわけです。

しかし、ひと口に一元化といっても、それぞれが別個の枠から発生してきた制度なので、全部を一緒にするのは大変に難しい。たとえば、厚生年金なら給料が明確だから納める年金額もはっきりしているけれど、自営業者の収入は100%正確に把握することは困難です。そのための納税者番号制度を導入するとプライバシーの問題も発生してくるなど、課題は山積しています。

「年金」単体で考えることの難しさ

今国会では年金改革だけを議論していましたが、実はこれ自体がおかしなことなんです。というのは、年金とは「社会保障」のひとつ。病気になったときのための「医療保険」、老後の「介護年金」と3つセットで考えるべき問題なのです。この各課題について、医療保険は'05年、介護保険は'06年に検討することになっています。さらに、これらの保障のための財源をどうするかという大問題も、本来であれば同時に検討されるべきです。しかし今年の年金改革法案には、将来の財源確保について、具体的な方策は明記されていません。すでに700兆円もの借金がある国としては、現実問題「収入」を増やさないことには、どうしようもないでしょう。その収入とは、ずばり税金です。その税金の問題は'07年度に考えましょう、ということになっています。こうして個別に考えていたのでは、しょせんはツギハギの案でしかありません。

年金をはじめとして、社会保障や税金の問題は生活に直結する大事な問題です。現行制度を少しいじる程度の改革ではなく、税金負担アップも正々堂々、誠実に説明しながら、ゼロから構築し直すべきではないでしょうか。世代間や制度間に不公平感がない――働く女性も自営業者も専業主婦も、それぞれ皆が最大限満足できる新しい年金制度の大きな枠組みを提示すべきときだと思います。

(構成/小野純子)

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