「Oggi」 なるほど北川塾 〜基礎から学ぶ〜

04年6月号
値札が消費税込みの合計額に! 高くなった? 安く感じた!? これって、どんな意味があるの?

最近、商品の値札を見て、あれ?と思った人も多いのではないでしょうか。4月1日から、商品の価格表示が、本体価格と消費税を合計した「総額表示」となりました。これは、昨年3月に決定した「改正消費税法」が施行されたことによるものです。今月は、この問題から始めて、税金というものの考え方全体についてお話ししていきましょう。

どちらがいいというよりは・・・!?

この表示方法の義務化に際しては、各所でさまざまな混乱が生じました。100円ショップは、店名はそのままでいいと認められたものの、商品の価格表示は105円に!? すでに発行された書籍のカバーに印刷された本体+税の表示を全部刷り替えるのか?いやいや、スリップ(札)だけ替えればいいことにしよう、とか。メーカーや店頭では値札の付け替え、加えてレジシステムの変更…。こうした手間によって、某ディスカウントショップでは5,000万円もの損失とも言われています。

これまで、本体価格だけの表示に特段の不便も感じていなかった、という人も多いはず。少しでもコストは圧縮したい不景気なこのご時勢に、なぜこのような多大なるコストをかけさせてまで、「総額表示」を義務づけることになったのでしょうか。

政府の言い分はこうです。これまでの「外税」方式では、総額でいくら払えばいいのかわかりにくかった。980円のランチを頼んだのに、会計をしたら1,029円で1,000円を超えてしまった…なんて経験がありますね。「内税・総額表示」に統一すれば、全部でいくら払うのかわかりやすいし、外税と内税表示が混在しているときより、価格の比較もしやすくなる。消費者にとってメリットが大きいでしょう、と。

しかし、外税方式なら「税金をいくら払っているか」が明快なので、税金の使い途に対しても意識的になるし、厳しい目で見ることができるのに…。この総額表示方式では、払う税金の額がわかりにくくなり、いわゆる「痛税感」がなくなる。これは、近い将来の消費税アップのための「布石」なのではないか!? という指摘もあります。

これは、どちらも正論です。

問題なのは、どちらが正しいか、いいか悪いか、ではなくて、この問題について、国からなんの説明もなかったことではないか、と私は思います。いつの間にか決まっていて、気がついたら、店頭の価格表示が変わっていた、という感じがありませんか?知らないうちに決まっていたのでは、何かウラがあるのでは!? と疑う気持ちも湧いてきて当然です。

消費税アップはもはや国際トレンド!?

では、「ウラがあるのでは?」と疑われている、消費税値上げの問題について考えてみましょう。これは今や止めようのない流れだと思います。実際に700兆円もの借金がある国ですから。なんとか歳入を増やさないといけません。

国際社会的に、所得税や法人税などの「直接税」よりも、これからは消費税などの「間接税」を重視するというのが今の潮流です。なぜなら、所得税は収入に応じて決められた額が取られるけれど、消費税なら、消費者の懐具合によって検討できる自由があるから、抵抗がないだろうというわけです。つまり、お金があるときには1万円の化粧水を買おう、500円の消費税だって払えちゃう。でも、給料日前でちょっと苦しいから、今回は1,000円の化粧水で我慢だ。消費税も50円しか払わないわ、というように個人の選択が可能ですね。世界的にこの間接税重視に傾く今、日本だけ消費税は上げませんなどと言っていては、グローバルな国際競争に戦っていけなくなります。そういった意味でも、消費税値上げは、もはや逃れられないところにきているのです。

税金は払うことと受け取ることの両面から!?

税金というのは、とかく払うほうにばかり目がいくので、たしかに税率アップには抵抗感があるでしょう。ですが、本来、税金は「負担/受益」の両面で考えるべきものなのです。

たとえば今の消費税5%が10%に増えた(負担)とします。その分、生活をより豊かにするもの(社会保障、医療環境、年金、道路や線路の安全や高架などなど)が充実するのだ(受益)、と言われれば、納得がいくでしょう。この両面のバランスなんです。

ちなみに北欧では、所得税と付加価値税(※日本での消費税にあたるもの)で収入の合計70%超、という高い税金となっています。でも、医療費や教育費はタダ、高福祉で老後も安心など、生活は豊かです。高負担/高福祉ですね。彼らはこれだけ高い税金を払っているので、政治には注意を払うし、言いたいことも言います。

ですから、これから税金を上げること自体ではなく、その意味・理由・内容をちゃんと国民に説明しないで、なしくずし的にやろうとしている様子のほうが、私は問題だと思います。

今回の改正についても、事前に国からのきちんとした議論や説明があれば、私たちの生活実感に結びつくので、消費者としてさまざまな方面に目を光らせたりできます。たとえば、消費税分の端数を切り上げることで「便乗値上げ」をしているものは買わないぞ、とか。反対に、値安感のある2,800円といった価格を守るため、企業努力で実質的な値下げをする「便乗値下げ」があれば、喜んでその商品を買いますよね。実際に、大手カジュアルウエア企業では、値安感のある2,900円が3,000円台に乗って割高感を与えるのを避けるため、全体で4.8%の値下げに踏み切りました。要は、この改変にともなうさまざまな結果について、国民それぞれが自由に判断し、選択できるための、必要な情報が開示されていることが大切なんだと思います。

(構成/小野純子)

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