「Oggi」 なるほど北川塾 〜基礎から学ぶ〜

04年5月号
実家の町が合併するらしい。それって、どうして!? で、この先どうなるの!?

最近、ニュースなどで「市町村合併」がさかんに言われています。今月はこのことについてお話ししたいと思います。

地方自治の歴史をおさらいしてみると

まず、地方自治についての歴史を整理しておきましょう。

戦前まで、地方は国の出先機関として、国の仕事を委任されて行うだけのものでした。戦後の昭和22年に、日本国憲法と同時に「地方自治法」というものができ、ひとまず地方は地方としての自治を行うということになったのです。それから50数年が経過しましたが、実態は、本当の意味での「地方自治」にはなっていませんでした。なぜなら、戦前からの機関委任事務は、都道府県(以下、県に省略)で80%、市区町村で40%も残っていて、法律や制度などを「考える」部分はほとんどが国任せ。それが県に、そして市区町村へ下りてくる、つまり市区町村は、国に考えてもらったことをコツコツと執行していくだけだったのです。

そして平成12年4月に「地方分権推進一括法」が施行。これを機に、今までは、ほとんど全部国のいう通りにしなくてはいけなかったのが、これ以降は好きなことを自由にやれるようになりました。その流れを受けて、いろんなことをやるには規模が必要だということで、市町村合併の動きが活発になってきているのです。

同時に、国は支出のスリム化を目指した「行政改革大綱」で、現在全国で約3,200ほどある市町村を1,000程度に減らすという目標を閣議決定しました。

よく聞くけど「三位一体の改革」って?

この問題を理解するには、もうひとつの用語を押さえておく必要があります。これもよく耳にすると思いますが「三位一体の改革」。これは、国から地方への分権を進め、行政を効率化して財政再建を図るための改革案です。具体的には、国から地方への「補助金」、「地方交付税」を減らして、その代わりに地方の「自主財源」を増やしましょうというもの。しかし、自主財源については大幅に移譲ということにならず、減らすものはたくさんで、入るものはほんの少し。全国の都道府県の予算編成で約1兆7,000億円の財源不足となりました。北海道では約1,730億円もの不足ですよ。これでは予算が組めない!と、今、地方は困り果てています。

今、市町村の合併が加速化している背景には、この地方の苦しい実情に加えて、合併をしたらこんなご褒美、という「合併特例法」の期限切れが来年3月31日に迫っているからという面もあります。合併すれば、10年間は「合併特例債」と言って、合併した町と町をつなぐ道路や博物館、文化ホールなど市民が利用する施設の建設には、国が借金の7割を肩代わりしましょう、などさまざまな形の実質的な“補助金”が出ます。いわゆる「アメ」と「ムチ」のもとで、合併が進んでいるわけです。

「北京の蝶がNYでハリケーンに」???

分かりやすい例としては、埼玉県の浦和市、大宮市、与野市が合併して誕生したさいたま市がありますね。自分たちで条例がつくれる政令指定都市になり、ワールドカップ開催の会場誘致にも成功しました。

規模が大きくなれば、考える力も生まれます。これまで10人のスタッフでは日常の業務で精一杯だったことも、ふたつの自治体が合併して合計20人のスタッフができれば、15人は業務にあたり、あと5人は10年先20年先のことを見据えた企画を考えるほうに回れます。

今の動きは、地方にとって国全体にとってもいいことだと思います。自分たちの地方の個性に合わせた街づくりを、自分たちの考えで進めていけるのですから。

そもそも、北海道から沖縄まで、まったく一律に同じことをやれということ自体に無理があります。気候も違えば文化、風土も違う。それぞれ個々の事情に合わせたやり方があるはずです。ウチは歴史文化があるから、そこを際立たせた街にしようとか、ウチは水がいいから、水を利用したものをつくろうとか、そしてそれぞれ魅力的な地方が生まれれば、ほかの地方も「あ、いいな。じゃあウチはこうしよう」と、互いに刺激し合い共鳴し合い、やがてそれが大きなうねりとなり、国の形が変わっていく。

これは「北京で小さな蝶々がはばたくと、遠く離れたニューヨークでハリケーンが生じる」というたとえ話と同じです。なんだかわからない(笑)!?自然科学のカオス理論からきている話なのですが、つまりは“ある部分で起きた小さな変化が全体に大きな変動をもたらす”という理論なんですね。地方分権・市町村合併で言えば、一地方の1羽の蝶が、2羽3羽となり、やがて国全体にハリケーンを起こす。こうしたことで、この国の閉塞感はとれていくんじゃないかと私は思います。合併で蝶の数は3分の1に減るかもしれないけれど、1,000羽の蝶が舞うんですよ。なかなか壮観な眺めじゃないでしょうか。

「中間管理」はいらなくなる

合併がなされたことで、実際の生活上で即大きく変わることについては、まだ見えてきていません。これからのことでしょう。

しかし、市区町村が合併して大きくなって、それぞれが力をもち始めたら、もしかしたら県は必要がなくなるかもしれませんよ(笑)。今は国、県、市区町村という三層構造になっていますが、交通事情や情報通信事情が発達して、時間と空間の壁が実質的になくなってきました。そうすると、「中間管理機関」としての県が本当に必要か。国と市区町村と直接でいいじゃないかと。会社で、ITが発達したら、中間管理職は本当に必要かというと、いらなかったりする場合もあるでしょう(笑)、それと同じですよ。実際に、今の話題で言えば、長野県山口村と岐阜県中津川市との県を越えた合併が決まりました。

やがて、県も合併して、道州制、連邦制に移行することになるかもしれません。国の形が変わっていく、大変革の時代がもうそこまで来ている感じがします。

(構成/小野純子)

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