月刊 「ガバナンス」  - 分権オピニオン -

06年01月号 地方分権シンカ論31
地方議会・議員もマニフェストの導入を

首長候補者にローカル・マニフェストが急速に広がるに伴い、地方議会・議員の間でもマニフェストに対する関心が高まっている。ローカル・マニフェスト推進地方議員連盟の加入者は現在500人を超える。二元代表制の中で、地方議会・議員はマニフェストをどのように考えればいいのか――。

大政治展開のためにマニフェストの導入を

私がローカル・マニフェストを提唱した当初から、執行権・予算編成権を持たない地方議会・議員にはなじまないという指摘があった。しかし、地方自治体は二元代表制であり、首長も最終的には議会の議決を経なければ政策を実現できないため、選挙で明確に約束することが可能なのかという議論もある。まだまだ財源を国に握られていて、首長が自己決定・自己責任型の行政経営ができないという問題もある。

このように課題は多いが、分権時代を見据え、政策の大転換、大政治を展開するためにも、私は候補者はマニフェストを導入すべきだと考える。

これまで地方議会の議員は、首長と一緒に国に陳情し、獲得した補助金を自分たちで適当に分配してきた。したがってチェック機関というより、むしろ追認機関としての傾向が強かった。

地方分権を確立するためにはまず、首長候補者が選挙時に経営理念、経営方針、達成方法を明記したマニフェストを書く。そして、その進捗状況を議会が厳しくチェックすることで自治は回転する。このマニフェスト・サイクルを確立することによって、国の下請け機関のような「地方公共団体」から「地方政府」に近づいていくのではないか。

政治の分権化

行政の分権が進めば、政治の分権も加速し、ローカル・パーティー(地域政党)が増えるだろう。ナショナル・パーティーがある政党の場合でも、理念・政策が一致するローカル・パーティー、地域課題を加味した独自のローカル・パーティーなどさまざまなタイプが出現する可能性がある。

地方分権一括法で国と地方が上下・主従の関係から対等・協力の関係になった。それと同様のことが政治の世界でも求められる。

今までは「こんなものだ」という思い込みで動いてきた。従来は長期の総合計画を基に行政は経営されてきたが、新人候補者が新たなマニフェストを掲げて当選すると必ず既存の総合計画とバッティングする。

議会ではマニフェストについての質問が盛んに行われ、総合計画との整合性が問われるようになった。

ある知事が私に、「マニフェストについて、議会からの追及が厳しい」と話したことがある。私は「それは県民にとってはハッピーなこと」と言った。今まで県民の目に見えないところで話し合いが行われてきたが、県民注視の公の議会で丁々発止の議論をすることはいいことだ。そう話すと、その知事も「そのとおり」と話していた。

事務局を強化しマニフェストの評価を

マニフェストは事後検証可能であることが特徴であり、内部検証し、結果を毎年公表している首長が増えてきたのは評価に値する。NPOなど第三者が評価するケースも増えてきた。このことは民主政治の進化だとらえている。

チェック機関として議会によるマニフェスト評価も求められるが、そこで、私が重要だと思うのは議会事務局の体制強化と優秀な職員の配置だ。いくら情報公開が進んでも、行政情報は複雑・多岐にわたるため、一般市民が正しく検証するには物理的に限界がある。だからこそまず、議会の議員がチェックし、県民に公表し、県政を主権者である県民のものにしていく努力が求められる。

従来、議会の会派は、議長など議会内の人事のために構成されてきた面がある。二元代表制の中で一方の主権者の代表である議会は、まさに自分たちで条例を制定するぐらいの気迫と能力を身につけることが大事であり、会派も政策中心にならなければいけない。

また、監査委員事務局も従来の財務監査から、いわゆる政策監査的な分野にも踏み込んでいくべきだ。

二元代表制を活性化させる道具

地方議会の議員候補者が選挙でマニフェストを作成することについては学者の中でも意見が分かれている。一般にマニフェストは「政権公約」と訳され、その意味からすると議会のマニフェストは成り立たない。しかし、私はあえて「できる」と主張している。マニフェストを定義づけることも大事だが、それ以上に民主主義のインフラ整備を進めるための道具という意味合いに力点を置いて推進しているからだ。

議会は主権者に選ばれた二元代表制の一翼を担う。執行権・予算編成権は執行部に専属するとされるが、一度疑ってみることも必要ではないか。一部は議会にも必要だとなれば、法改正を求めてもいい。首長とともに、住民から選ばれた代表が議員であり、条例提案権を有することを重視すれば、執行部のチェックだけではなく、住民や地域の思いを議員提案で形にすることを強く意識すべきだろう。

議会の役割である議決権は、まちのルールをつくること。自分たちと思いを同じくする会派が過半数を超えれば条例案を可決できる。その条例に基づいて執行部は執行し、進捗状況のチェックを議会が行う。

議会が条例をつくり、執行権者に実行を迫ることは、まさに執行権に匹敵するぐらいの拘束力がある。議会・議員も、自分たちが掲げる政策を大議論をして、執行部に実現を迫る。そういう努力を行うならば、議員も選挙時に会派でマニフェストを掲げてもいいのではないか。

また、他の会派と合意形成を図り、賛成多数を占めれば条例案を可決できるので、少数会派でもマニフェストは可能だろう。

議員は首長よりも住民に近い。その意味から住民を巻き込み一緒に議論し、まとめ上げた政策をマニフェストに盛り込めるのではないか。

首長は一般的に、住民に対して義務の履行や権利の制約を訴えにくい。しかし、住民に近い議員ならば、そのようなこともマニフェストに盛り込める可能性がある。その内容は、もしかすると、議員提案条例の特徴になるかもしれない。

首長は一人だが、議会はさまざま地域から選出される複数の議員による合議体。多くの議員がまちに出て、主権者とコラボレーションしながらまちづくりを考えていく活動が活発になれば、地方自治・地方分権はさらに進展する。

 

(構成/本誌・千葉茂明)

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