月刊 「ガバナンス」  - 分権オピニオン -

05年05月号 地方分権シンカ論23
女性の視点・参加による総合的なまちづくりを

三重県では2000年10月に「男女共同参画推進条例」を制定、翌01年1月に施行した。まちづくりを進める上で女性の視点や参加は欠かせない。性別にかかわらず、一人ひとりが自立した個人として、能力と個性を十分に発揮し、多様な生き方が認められるような社会の実現が求められている。

21世紀と同時に条例施行

三重県では、私が知事に就任する前年の94年に県女性センター(01年に「男女共同参画センター」に改称)が開館し、95年には第3次となる「みえの男女共同参画推進プラン」を策定するなど男女共同参画に積極的に取り組んできた。99年に、男女共同参画基本法が公布・施行され、三重県でも同法の理念に基づき、00年10月に男女共同参画推進条例を制定し、21世紀の幕開けと同時に施行した。

条例では、1)男女が性別による差別的取扱いを受けることなく、個人として能力を発揮する機会を確保すること 2)男女の固定的な役割分担意識に基づく制度及び慣行を改善すること 3)男女が社会の対等な構成員として、社会のあらゆる分野における方針の立案及び決定に参画する機会を確保すること 4)男女が家庭生活における活動と職業生活における活動その他の活動とを両立して行うことができる環境を整備すること――の四つを基本目標に掲げ、条例に基づく男女共同参画基本計画(02〜10年度)を02年3月に策定した。

審議会の女性委員は「おおむね50%」を目標に

条例制定に行き着くまでには、いくつかエポックメーキングな出来事があった。

まず95年度に行った「さわやか運動」で実現した女性職員の事務服自由化。事務服があることの効果やデメリットなどを議論する中で、ある職員から「若い女性職員が派手な服装で県庁に来たら一体どうなるのか」という指摘もあった。私は男性に事務服がないのならば、女性もなくして個性を発揮すればいいと考えていた。

もう一つは県議会での質問。県は市町村の女性職員の管理職登用についてどのような指導をしているのかという質問通告がきた。「市町村と県ではどちらのほうが登用率が高いのか」と担当職員に尋ねたところ、市町村のほうが高かった。県のほうが低いのに、市町村を指導するなどできるはずがない。

新しい総合計画である「三重のくにづくり宣言」を検討したときには、女性の審議会等への登用が議論となった。その後、「三重県審議会等女性委員登用促進基本要綱」を定め、2010年度の目標は「おおむね50%」という高い目標を掲げた。要綱では審議会等の委員を選定する際は、生活部長と事前協議を行うことにしており、95年に10%前後だった登用率は、99年が24%、00年が23・7%、01年が26・9%、02年が29・2%と着実に上がってきた。

女性の進出が少ない職種・分野がある中で「おおむね50%」という目標は、絵に描いたモチになるという意見があった。一方で、それならば女性が活躍する分野を広げる努力をすべきで、男女比に合わせて50%を目標にすべきだという意見とが激しくぶつかった。大議論の末に、「おおむね50%」という高い目標を掲げることができたことを私は評価した。

官官接待廃止も男女共同参画に寄与

女性職員の管理職登用は慎重に行った。登用率向上のみを考えて、能力を身に付けないうちに登用しては本人がポストに負けてしまう。多少遅れるかも知れないが能力開発を進めることが大事であり、そのためにも男女を問わず研修を重視した。

たとえば産業廃棄物税のたたき台を議論した「県税若手グループ研究会」の20代の女性職員はヨーロッパまで調査に行った。私は意識的に女性職員を出張させた。「頑張れば、若い女性職員も海外調査に行くことができる」という雰囲気をつくりたかったのである。

旅費の不適正執行(カラ出張事件)も男女共同参画の推進に役立った。県民やマスコミから厳しい批判を受け、いわゆる官官接待の全廃を打ち出したとき、ある女性職員から礼を言われたことがある。

それまで職員が出世しようとすると、根回しなどで夜のつき合いが不可欠だった。「昼間の勝負で能力を比較されるのは致し方ない。ところが、夜の根回しで評価されるなら、どうして女性は出世できますか。今回の旅費の不適正執行の廃止、官官接待の全廃こそが、男女共同参画の最大の政策です」と言われた。

ある意味で、従来の情報非公開、根回し、談合という文化を変えることによって、女性の管理職への道が大きく開けたと言える。私の知事在任中も女性の管理職登用率はまだ低かったが、増やす方向にベクトルが向いた。

まちづくりも男女共同参画で

三重県では00年5月30日に、県と労働組合で全国初の「労使協働委員会」を立ち上げ、「対等と信頼」を基本に、オープンな場で議論することにした。この中でテーマの一つとなったのが勤務時間の問題だった。

県民が満足いただける仕事をしなければ、職員の満足はあり得ない。逆に職員が自己実現できなければ県民満足もあり得ないので、17時半の退庁や年間総労働時間1900時間をめざす運動を行った。さらに2週分の土日を合わせて連続9日間の休暇を取ることも勧めた。これは従来の男性優位の文化を変えたかったことが背景にあった。

家庭と仕事との両立を考えると、夜遅くまで残業すべきではない。また、職員は、家庭や地域での活動も積極的に行うべき。私の知事在任中は緒についたばかりだったが、男女共同参画社会の構築を考えれば、働き方そのものを大きく変えていくことが必要だろう。

まちづくりにおいても男女共同参画の考え方が求められる。従来は中央集権型の都市計画、国土開発が中心だった。ところがいまは地域の状況を見据え、地域に見合ったまちづくりが求められている。そこでは省庁タテ割りではなく、総合行政の視点が必要になる。

公共サービスの唯一の担い手は行政だとみんなが思ってきた。ところが、厳しい財政状況などを背景に、これからはNPOや企業、団体など多様な主体が公共サービスを担っていく。行政は一つのサービス主体であり、むしろコーディネート機能が重視される。

生活者を起点とするきめ細かな総合行政を、多様な主体で展開するとき、女性の感性や能力を活かし、女性の積極的な参画でまちづくりを推進していくことは必然的なことではないだろうか。

(構成/本誌・千葉茂明)

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