月刊 「ガバナンス」  - 分権オピニオン -

04年08月号 地方分権シンカ論14
戦略的思考で、グリーン購入を積極的に推進

三重県は2000年5月に「グリーン購入大賞」を受賞した。その中心となったのは出納局。同局ではグリーン購入の原則である3R+1Lに独自に「リシンク」(考え直す)を加えるなど戦略的にグリーン購入を推進した。

戦略的な出納に

三重県では99年7月に「みえ・グリーン購入指針」を、01年10月に「みえ・グリーン購入基本方針」を策定し、数値目標を定めてグリーン購入に努めてきた。この取り組みの中心となったのが出納局だった。

グリーン購入が進んだ背景には、県庁全体が、「管理」から「経営」へと意識が変わってきたことがある。出納局は従来から、いかに安く購入するかという努力はしてきた。その努力は必要だが、一方で私は「もっと戦略的な出納になるべきだ」「環境に優しい商品を買うべきだ」とハッパをかけた。そこでパラダイムが変わってきた。

当時、滋賀県のグリーン購入が進んでおり、「滋賀県を追い抜け」と盛んに言った。琵琶湖を抱える滋賀県の取り組みは優れており、隣に滋賀県があって本当に良かったと思った。

インセンティブ政策の必要性

グリーン購入を始めると、すぐに価格の問題にぶつかった。担当者は「再生紙よりもバージンパルプの紙のほうが安い。県民から税金をいただいて運営しているので、それでは議会を通りません」と言う。もっともな話だが、それは予定調和の発想でしかない。「なぜ再生紙のほうが価格が高いのか」。ロットが少ないからだという。「それならロットを大きくしたらいいじゃないか」と議論を進めていった。

県としてはインセンティブ政策として、少々価格が高くてもグリーン購入を進めようと、議会に議案を提出した。2割程度は高くても環境配慮型の商品を県としては購入するというものだったが、それを県議会が理解してくれた。

その結果、01年度には、日常的に購入するすべての消耗品が環境配慮型商品となった。00年5月にはグリーン購入ネットワークから「第3回グリーン購入大賞」を受賞することができた。自治体での受賞は第1回の滋賀県に次ぐものだった。

再生品が100%になると、マイナーだった再生品がメジャーになる。すると競争が起きて価格も安くなってくる。価格が高ければ安くしたらいい。そのための手法を考えるべきなのです。

「4R+1L」を原則に

三重県ではその後、議員提案で「リサイクル製品利用推進条例」が制定された。このことは議会も意識が高まってきた表れだと言える。従来、公務員は議論を避けてきた。「議会やマスコミ、県民に批判される、叱られる」と判断し、なかなか新たなことに取り組もうとしなかった。

しかし、そこでリーダーがただ「頑張れ」と言っても職員は絶対に動かない。まず障害を明らかにすることが大事。たとえば「議会が反対する」というのなら「では議会が認めたらやるのか。それなら議会と話をしよう」となる。職員に勇気を与えるには、スキルが必要になる。

出納局は、リデュース(節減)、リユース(再利用)、リサイクル(再生利用)、ロングライフ(有効利用)というグリーン購入の原則である「3R+1L」に、独自に「リシンク」(考え直す)を加え「4R+1L」にした。このような発想が出てくるところにも経営的な考えが身に付いてきたと感じた。

県庁近くの旧看護短期大学の建物内には、「リサイクルセンター」を設けた。ここでは机や椅子、書庫など県の備品でいらなくなったものを修繕し、必要な部署が再活用した。県庁の備品は職員のものではなく、県民のもの。私は「直せるものは直し、A部で不要になってもB部で必要ならば再利用を図れ」と言った。出納局では職員の電子掲示板に「リサイクルフォルダ」を立ち上げ、マッチングさせていた。職員はきっかけを与えると、次から次へと新しい発想が出てくる。

静脈産業の育成を

環境政策について私の知事時代の8年間は、全国の先頭を走ってきたという多少の自負はある。

まず98年度の機構改革で「環境部」を独立させ、県庁内外に環境に力を入れていることを示した。

98年12月には県庁組織としてISO14001の認証取得に取り組もうとプロジェクトチームを立ち上げ、00年2月に取得。その後、地域機関や市町村、企業にも認証取得が広がっていった。

環境部の「三重の環境」というホームページは毎日更新し、「環境goo大賞」を2年連続で受賞した。

シャープの誘致でも「生活環境の質が高まる地域社会づくり」を戦略の一つに掲げた。シャープでは製造段階から再資源化を考えて素材を調達する「ライフ・サイクル・アセスメント(LCA)」の考えを取り入れている。亀山市や多気町では日本一、いや世界一の環境に優しいまちづくりをめざしている。

環境に関する県民運動も行った。まず99年に、県民の環境保全・創造活動を支援していくため「三重の21世紀環境創造活動支援基金」を設け、その運用を民間に委ねることにした。

夏には「夏のエコスタイル」と「夏のエコポイント」に取り組んだ。また、県民からの提案で「レジ袋ゼロ」運動も行われたし、環境に配慮した森林管理を進めるため、森林管理協議会(FSC)の認証取得を支援し、三重県内の林業家が国内で初めて取得した。

さらに、環境経営のさらなる普及・発展を図るため、02年度から「日本環境経営大賞」という表彰制度を創設した。この表彰を通じて、環境に関する人材や技術のネットワークを構築し、さまざまなニュービジネスや新技術が育ってくれることを期待している。

産業廃棄物税は当初4億円くらいの税収を見込んでいたが、実際にスタートしたところ1億3,000万円ほどだった。その差額分は再利用されたことになる。企業側にも環境経営を進めたほうがメリットがあるという意識が高まってきたと思う。

いま道州制の議論が行われているが、環境問題は地域限定では解決できない。実際に、産業廃棄物は県境を越えて移動する。環境政策を考える上で広域性は避けて通れない。道州制を考える上でも環境政策は一つの大きな課題になるのではないだろうか。また、対策を講じるだけではなく、動脈産業と静脈産業の融合、あるいは動脈産業を静脈産業に育てていく政策にも自治体は一層積極的に取り組む必要があると思う。

(構成/本誌・千葉茂明)

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