北川のつぶやき

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日常の努力、非日常の成果

日本を代表するプロゴルファー中嶋常幸選手、誰もが知っている選手だが、40歳から47歳までの7年間、優勝することが出来なかったことを皆さんご存知だろうか。その間、練習を怠っていたわけではなく、あらゆる努力を尽くしてもなお、勝てない日々を過ごしていた。そして、悩みに悩み、プロゴルファーを辞める決意すら持ち始めたころ、最後の一手として、自分が育てた若いゴルファーの元に出向き、己れを捨てて指導を乞うた。すると、若いゴルファーからこんな一言を投げかけられることになる。「失礼ですが、ボールがよく見えますか?」。中嶋ははっとした。自分の考えの及びもつかなかったことを、しかも自分の弟子である若いゴルファーに指摘されたのである。中嶋は、このアドバイスを素直に受け入れ、眼の手術をする決断をした。現在彼の両目は1.5で、トレードマークでもあるメガネは実は伊達メガネだそうだ。

さらに、二十歳の頃の写真を見せられながら、この様にも問われる。「身体はどこまで廻りますか。二十歳の頃のスイングがこれです」。まだ若いイメージでスイングしていたが、それはイメージにすぎなかったことを、文字通り目の当たりにすることになった。ここでも中嶋は抜本的な体質改善に取り組むことを決断する。背骨から体幹を作り直し、試合前のストレッチにも長い時間をかけるようになった。その結果が、待ちに待った7年ぶりの優勝である。懸命な努力を繰り返し、考え悩み抜き、「己を捨てて若い指導者に教えを請うた」ことで得られた“抜本的な気づき”が、もたらした優勝であったことは言うまでもない。

優勝した時のインタビューで中嶋はこんな言葉を残している。「この優勝は中嶋の復活Vではなく、四十七歳の新人中島常幸の初優勝です。ずっと勝てずに悩んだ末、過去の栄光はすべて捨て、ゼロからスタートした結果の優勝だから過去の中嶋ではなく、全く新人の中嶋なんです」の言葉にあらわれているとおり、まったく異次元の高次な世界に到達したのである。

ボールを1000球打ったり、クラブを変えてみたりするなど、日常の努力は誰でもしている。努力を怠りなく続け、考え抜くことにより、「ゼロへ戻る」という、それまでは考えもつかなかった非日常の発想にたどり着くことができ、新たな次元の成果へとつながる。
「気づけ」と他人に言われても、そうそう簡単に気づけるものではない。非日常の発想に辿り着くには、自分自身で“気づく”しか方法はない。
「日常の努力に怠りはないか」「一回り年齢の違う仕事上の部下に頭を下げて相談できるか」。皆さんも一度ゆっくり考えてみてはどうだろうか。


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